講演要旨★八代海の環境再生シンポ(第3回環境塾シンポ)
平成21年8月29日(土)に実施致します
第3回みなまた環境塾シンポジウム
「八代海の環境再生:里海との共生に向けて」
各講演の要旨を、先生方より作成いただきましたので掲載致します。
参加申し込み方法はこちらをクリック
第3回みなまた環境塾シンポジウム
「八代海の環境再生:里海との共生に向けて」
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基調講演 「八代海の環境再生-里海との共生に向けて」
講師 浅川 牧夫 NPO法人植物資源の力 理事長(みなまた環境塾講師)
生活と海との関わり
地球は広大な宇宙の中で唯一水の惑星といわれている。地球の表面積の約70%が海である。日本人は古代より海を開拓し、様々に利用してきた。日本列島を取り巻く海域は世界的に見ても良好な漁場が多い。これは日本列島が南北に長く、黒潮と親潮の影響を強く受けているからである。しかし、近年ではこれまでの開発等によって海の環境が破壊されてきている。特に、瀬戸内海をはじめとして有明海、八代海等の閉鎖性の強い海域の環境問題は深刻である。
日本人は古くから海と関わった生活を送ってきた。12000年前の縄文の草創期は、最終氷期末でまだ寒冷であり、今より海面は40mも低かった。その後、世界的な地球の温暖化で海面が上昇し、6000年前の縄文前期には現在よりも3~4m海面が高くなった。その結果、平野部の奥深くまで海が侵入していった(縄文海進)。
縄文人はそれまでの狩猟・採集にたよる食料の確保に加えて、次第に浅海での漁猟に目を向けるようになった。鹿の角で巧みに釣り針、モリ、ヤス等の漁具を作り、丸木舟を漕ぎだして果敢に海に進出していった。海に依存した当時の生活の様子は貝塚から知ることができる。このようにして日本の伝統的な魚食文化は縄文時代に萌芽したのである。
戦後は日本経済の高度成長により人々は豊かな生活を享受できるようになってきたが、一方では陸や海の自然環境の破壊が目立つようになってきた。海洋汚染が進み、海の状況がそれまでと大きく変化し、漁獲量が急激に減少し、漁民の生活を脅かすような現状である。
特に、有明海や八代海のような閉鎖性の強い海域では、陸からの栄養塩の過剰な流入によって赤潮が頻発するようになり、夏季には貧酸素状態の海域が拡大し、海自身が本来持っていた再生への自浄能力を超える状況になってきている。閉鎖系の海域では、海域環境への人為的な負荷が増大するにつれ、一度海の自浄能力が低下すると元の自然環境に戻すことは非常に困難になる。
里海との共生に向けて
かつて里山は生活に必要な食料、燃料、牧草、肥料、建築材等を得るため、そこに住む人々によって積極的に手が加えられ、長い間持続的に資源の管理がなされてきた。管理を放棄することは直ちに生活の基盤を失うことにつながり、住人の責任として管理のために共同作業が行われてきた。現在では里山から得られていた多くの資源は、多様な加工食品、化石燃料、人工飼料、化学肥料、新建材等にとって代わられた。その結果、現状では里山の管理が放棄され、自然環境を破壊するような状態になってきている。
漁村では縄文以降、海の恵みにより生活を営んできた。目の前の豊饒の海からはいつでも魚介類や海藻等を容易に手に入れることができた。従って、里山の住人に比べて積極的に身近な海域の自然環境について、あまり関心が払われてこなかったように思われる。
環境を再生するということはどのようなことなのか、改めて問い直す必要があるように思われる。それは対象となる海というものをどれほど理解しているかという問いでもある。海の水がきれいになってきた、魚が多く住むようになってきたといった現象も、環境再生の一つの成果かもしれない。しかし、海の環境再生は外観から見て判断しても評価は困難である。広大な海での生物間の相互作用や物質循環あるいは森・川・海をつなぐ生態系を通して、海というものを理解することが非常に大切である。
海の環境再生への取り組みの第一歩として、里海を知り里海と共生していくことの重要性を理解していただければ、このシンポジウムを企画した目的は達せられると思う。
講演① 「植物プランクトンの生態と暮らしへの影響」
講師 本城 凡夫 香川大学瀬戸内圏研究センター長・特任教授
陸上では草木が繁り、光合成によって無機物から有機物を合成しているが、海中では植物プランクトンがその役割を果たしている。植物プランクトンの多くは有益であるが、毒を生産して人間に被害を与えたり、赤潮を形成して魚介類を殺す悪者植物プランクトンもいるので油断できない。植物プランクトンのサイズはかなり小さい。しかし、細胞の構造は複雑で、推進モーターで鞭毛を回転させて懸命に遊泳する種類もいる。大半は光合成を営み、海水に溶けている窒素やリンなどの無機物を細胞内に摂取して生きていると長い間考えられてきたが、光合成を営む能力を持ちながらも自分よりも大きな生物を襲って細胞に取り込んで栄養にしているどう猛な種類も見つかっている。植物プランクトンは豊かな海を支えるために動物プランクトンに食べられる宿命にある。動物プランクトンは小さい魚に、小さい魚は大きな魚に食べられる。このような一連の食物連鎖を通して魚は育っている。しかし、食う・食われるの関係は複雑な網目模様(食物網)であるのが普通である。
窒素やリンなどの栄養が不十分な海(貧栄養海域)では植物プランクトン種の細胞密度は低く、彼らは海水中でバランス良く同居しているが、栄養が豊富な海(富栄養海域)では、一変してバランスが壊れてしまう。すなわち、特定の種類が高密度に増殖を開始して赤潮を形成し、赤潮が形成されると他者を排除して単一の種類で勝ち残り、水産生物に大きな被害を与え、人間の暮らしに悪影響を及ぼすようになる。
これまでに最も研究が進んでいるヘテロシグマという種類を例に赤潮発生機構を説明する。ヘテロシグマ赤潮は人為的に屋外水槽の中で発生させることができるが、そのためには水槽の海水交換を1日0.5交換に設定し、栄養塩を補給して、珪藻類など増殖競合生物と増殖阻害物質(アレロパシー物質)を極力槽外に捨てる必要がある。さらに、増殖を開始すると短期間で赤潮になること、珪藻類が減少して栄養塩が回復した時に増殖すること、夜に分裂し、1日3回の分裂が可能であることなども分かっている。底生期細胞(陸上植物のタネ)は赤潮形成時に大量に形成され、シストは泥に沈積する。これらのシストは次の赤潮になる春まで大きく減少してしまうが、5月に残り少ないシストが発芽して再び赤潮を形成する、High risk-high returnで生きのびている。
熊本県八代海に発生する主要な有害赤潮生物はコックロディニウム・ポリクリコイデスとシャットネラ属である。これらの赤潮の発生予察や発生防除の研究も進められている。
講演② 「沿岸域の物質循環における底生生物の役割~干潟の生態系を例に~」
講師 山本智子 鹿児島大学水産学部付属海洋資源環境教育研究センター准教授
沿岸域、特に河口に成立することが多い干潟は、川が海と出会う場所であり、陸上生態系と海域の生態系が接するところです。ここでは、河川を通して陸域から有機物や栄養塩など多くの物質が流れ込み、沿岸域に生息する多くの生物を養ってきました。しかし、近年人間の活動によって海域に流入するこのような物質が増加し続けており、ご存知の通り、海域の富栄養化に続いて赤潮や溶存酸素量の低下といった様々な問題をもたらしています。閉鎖的で陸上からの影響を受けやすい八代海では、特にこの問題は深刻です。
本来、河川から流入した物質は、干潟や藻場などの生態系で様々な生物に利用され、食物連鎖を通して魚類や鳥などの大型動物に取り込まれた結果、その生物が外洋域や陸域に移動することで沿岸域から持ち出されていました。例えば、鳥が干潟で餌を食べ森で巣を作る(糞や死骸が森の生物に利用される)、鮎や鮭のように海域で成長し河川を遡る魚類が陸上動物に食べられる、といった現象です。この物質循環がうまくいくためには、干潟に物質循環を担う生物が多く生息できること、河口域から川を遡るルートが保証されていること、の2点が必要です。ところが、護岸や埋め立てによって干潟の面積は減り、河口には様々な人工構造物が作られて動物の遡上を阻んでいます。
今回は、干潟の生物を例に、生物たちが食物連鎖を通して物質循環に果たしている役割について解説します。また、干潟に物質循環を担う生物が多く生息するためには、好適な生息環境が維持される必要がありますが、環境を維持するのもまた生物です。見逃されがちなそのような生物の働きについても紹介します。
講演③ 「Think globally, Act locally.地球環境、活かすも殺すも地域しだい」
講師 金刺 潤平 水俣浮浪雲工房主宰
この言葉をはじめて耳にしたのは、もう30年も昔の事だったように思う。使い古された言葉であるが、知識や概念としての環境破壊がリアルに迫っている今日、我々は、改めてその意味の重さを考えなくてはならない。
かつて、日本の田舎は、底力を持った村落共同体を基本とした社会を形作っていたが、近代化の中で核家族化、少子化、若年層の都市部への流出が進み、その在り様は、大きく変わってきている。活動の主役は、地域である事に変わりはないが、誰がどういう形で活動を担っていくのかは、改めて考えなくてはならない。牽引役は、誰なのか、実行の主役は誰なのか、活動の障害となるのは何なのか、地域住民を核とした環境を主題とするテーマコミュニティーを構築できるのか、方法論や技術論をないがしろにする訳ではないが、いかなる方法や技術を投入するのかと言った問題を検討するより、地域の生活文化を基礎にして活動の主体をどのように形成するのかと言った問題の方が難しい。
NPO植物資源の力は、今年から活動のフィールドの一つをその所在地である水俣市袋地区に求めた。袋地区は、閉鎖海域である不知火海の内海水俣湾のさらに奥に在る袋湾を中心にできている人口四千人の地域社会である。東は、矢筈岳山頂からはじまり、源流から河口までを地域の中に有している。その歴史は、定かではないが、江戸期辺りから干拓事業が繰り返され、住民は、田畑を築いてきた。貴重な原生林である冷水の森からは、滾々と水が湧き出しているが、水はまかない切れずに袋湾の奥手には、溜池が設置されている。また、湾周囲の埋め立てによってできた土地には、団地、住宅地、小中学校、合板工場が建ち並んでいる。その町並みを見ても、袋地域の生活の縮図がそのまま袋湾にあると言える。
袋の長老たちの生活文化は、自給自足を基礎にしていて環境にやさしい。自分たちが学ぶ事がとても多い。環境を保全し、低炭素社会を実現していくのに大切な技術や知識ばかりである。地域に入れば、先生は、長老たちである。この長老たちの持っている技を活かして楽しい活動を組み立てたい。子供、PTA,、各事業所、自治会、長老たちが「袋を愛でる」事を軸に袋湾のための楽しいネットワークを築くことが急務であると考えている。
講師 浅川 牧夫 NPO法人植物資源の力 理事長(みなまた環境塾講師)
生活と海との関わり
地球は広大な宇宙の中で唯一水の惑星といわれている。地球の表面積の約70%が海である。日本人は古代より海を開拓し、様々に利用してきた。日本列島を取り巻く海域は世界的に見ても良好な漁場が多い。これは日本列島が南北に長く、黒潮と親潮の影響を強く受けているからである。しかし、近年ではこれまでの開発等によって海の環境が破壊されてきている。特に、瀬戸内海をはじめとして有明海、八代海等の閉鎖性の強い海域の環境問題は深刻である。
日本人は古くから海と関わった生活を送ってきた。12000年前の縄文の草創期は、最終氷期末でまだ寒冷であり、今より海面は40mも低かった。その後、世界的な地球の温暖化で海面が上昇し、6000年前の縄文前期には現在よりも3~4m海面が高くなった。その結果、平野部の奥深くまで海が侵入していった(縄文海進)。
縄文人はそれまでの狩猟・採集にたよる食料の確保に加えて、次第に浅海での漁猟に目を向けるようになった。鹿の角で巧みに釣り針、モリ、ヤス等の漁具を作り、丸木舟を漕ぎだして果敢に海に進出していった。海に依存した当時の生活の様子は貝塚から知ることができる。このようにして日本の伝統的な魚食文化は縄文時代に萌芽したのである。
戦後は日本経済の高度成長により人々は豊かな生活を享受できるようになってきたが、一方では陸や海の自然環境の破壊が目立つようになってきた。海洋汚染が進み、海の状況がそれまでと大きく変化し、漁獲量が急激に減少し、漁民の生活を脅かすような現状である。
特に、有明海や八代海のような閉鎖性の強い海域では、陸からの栄養塩の過剰な流入によって赤潮が頻発するようになり、夏季には貧酸素状態の海域が拡大し、海自身が本来持っていた再生への自浄能力を超える状況になってきている。閉鎖系の海域では、海域環境への人為的な負荷が増大するにつれ、一度海の自浄能力が低下すると元の自然環境に戻すことは非常に困難になる。
里海との共生に向けて
かつて里山は生活に必要な食料、燃料、牧草、肥料、建築材等を得るため、そこに住む人々によって積極的に手が加えられ、長い間持続的に資源の管理がなされてきた。管理を放棄することは直ちに生活の基盤を失うことにつながり、住人の責任として管理のために共同作業が行われてきた。現在では里山から得られていた多くの資源は、多様な加工食品、化石燃料、人工飼料、化学肥料、新建材等にとって代わられた。その結果、現状では里山の管理が放棄され、自然環境を破壊するような状態になってきている。
漁村では縄文以降、海の恵みにより生活を営んできた。目の前の豊饒の海からはいつでも魚介類や海藻等を容易に手に入れることができた。従って、里山の住人に比べて積極的に身近な海域の自然環境について、あまり関心が払われてこなかったように思われる。
環境を再生するということはどのようなことなのか、改めて問い直す必要があるように思われる。それは対象となる海というものをどれほど理解しているかという問いでもある。海の水がきれいになってきた、魚が多く住むようになってきたといった現象も、環境再生の一つの成果かもしれない。しかし、海の環境再生は外観から見て判断しても評価は困難である。広大な海での生物間の相互作用や物質循環あるいは森・川・海をつなぐ生態系を通して、海というものを理解することが非常に大切である。
海の環境再生への取り組みの第一歩として、里海を知り里海と共生していくことの重要性を理解していただければ、このシンポジウムを企画した目的は達せられると思う。
講演① 「植物プランクトンの生態と暮らしへの影響」
講師 本城 凡夫 香川大学瀬戸内圏研究センター長・特任教授
陸上では草木が繁り、光合成によって無機物から有機物を合成しているが、海中では植物プランクトンがその役割を果たしている。植物プランクトンの多くは有益であるが、毒を生産して人間に被害を与えたり、赤潮を形成して魚介類を殺す悪者植物プランクトンもいるので油断できない。植物プランクトンのサイズはかなり小さい。しかし、細胞の構造は複雑で、推進モーターで鞭毛を回転させて懸命に遊泳する種類もいる。大半は光合成を営み、海水に溶けている窒素やリンなどの無機物を細胞内に摂取して生きていると長い間考えられてきたが、光合成を営む能力を持ちながらも自分よりも大きな生物を襲って細胞に取り込んで栄養にしているどう猛な種類も見つかっている。植物プランクトンは豊かな海を支えるために動物プランクトンに食べられる宿命にある。動物プランクトンは小さい魚に、小さい魚は大きな魚に食べられる。このような一連の食物連鎖を通して魚は育っている。しかし、食う・食われるの関係は複雑な網目模様(食物網)であるのが普通である。
窒素やリンなどの栄養が不十分な海(貧栄養海域)では植物プランクトン種の細胞密度は低く、彼らは海水中でバランス良く同居しているが、栄養が豊富な海(富栄養海域)では、一変してバランスが壊れてしまう。すなわち、特定の種類が高密度に増殖を開始して赤潮を形成し、赤潮が形成されると他者を排除して単一の種類で勝ち残り、水産生物に大きな被害を与え、人間の暮らしに悪影響を及ぼすようになる。
これまでに最も研究が進んでいるヘテロシグマという種類を例に赤潮発生機構を説明する。ヘテロシグマ赤潮は人為的に屋外水槽の中で発生させることができるが、そのためには水槽の海水交換を1日0.5交換に設定し、栄養塩を補給して、珪藻類など増殖競合生物と増殖阻害物質(アレロパシー物質)を極力槽外に捨てる必要がある。さらに、増殖を開始すると短期間で赤潮になること、珪藻類が減少して栄養塩が回復した時に増殖すること、夜に分裂し、1日3回の分裂が可能であることなども分かっている。底生期細胞(陸上植物のタネ)は赤潮形成時に大量に形成され、シストは泥に沈積する。これらのシストは次の赤潮になる春まで大きく減少してしまうが、5月に残り少ないシストが発芽して再び赤潮を形成する、High risk-high returnで生きのびている。
熊本県八代海に発生する主要な有害赤潮生物はコックロディニウム・ポリクリコイデスとシャットネラ属である。これらの赤潮の発生予察や発生防除の研究も進められている。
講演② 「沿岸域の物質循環における底生生物の役割~干潟の生態系を例に~」
講師 山本智子 鹿児島大学水産学部付属海洋資源環境教育研究センター准教授
沿岸域、特に河口に成立することが多い干潟は、川が海と出会う場所であり、陸上生態系と海域の生態系が接するところです。ここでは、河川を通して陸域から有機物や栄養塩など多くの物質が流れ込み、沿岸域に生息する多くの生物を養ってきました。しかし、近年人間の活動によって海域に流入するこのような物質が増加し続けており、ご存知の通り、海域の富栄養化に続いて赤潮や溶存酸素量の低下といった様々な問題をもたらしています。閉鎖的で陸上からの影響を受けやすい八代海では、特にこの問題は深刻です。
本来、河川から流入した物質は、干潟や藻場などの生態系で様々な生物に利用され、食物連鎖を通して魚類や鳥などの大型動物に取り込まれた結果、その生物が外洋域や陸域に移動することで沿岸域から持ち出されていました。例えば、鳥が干潟で餌を食べ森で巣を作る(糞や死骸が森の生物に利用される)、鮎や鮭のように海域で成長し河川を遡る魚類が陸上動物に食べられる、といった現象です。この物質循環がうまくいくためには、干潟に物質循環を担う生物が多く生息できること、河口域から川を遡るルートが保証されていること、の2点が必要です。ところが、護岸や埋め立てによって干潟の面積は減り、河口には様々な人工構造物が作られて動物の遡上を阻んでいます。
今回は、干潟の生物を例に、生物たちが食物連鎖を通して物質循環に果たしている役割について解説します。また、干潟に物質循環を担う生物が多く生息するためには、好適な生息環境が維持される必要がありますが、環境を維持するのもまた生物です。見逃されがちなそのような生物の働きについても紹介します。
講演③ 「Think globally, Act locally.地球環境、活かすも殺すも地域しだい」
講師 金刺 潤平 水俣浮浪雲工房主宰
この言葉をはじめて耳にしたのは、もう30年も昔の事だったように思う。使い古された言葉であるが、知識や概念としての環境破壊がリアルに迫っている今日、我々は、改めてその意味の重さを考えなくてはならない。
かつて、日本の田舎は、底力を持った村落共同体を基本とした社会を形作っていたが、近代化の中で核家族化、少子化、若年層の都市部への流出が進み、その在り様は、大きく変わってきている。活動の主役は、地域である事に変わりはないが、誰がどういう形で活動を担っていくのかは、改めて考えなくてはならない。牽引役は、誰なのか、実行の主役は誰なのか、活動の障害となるのは何なのか、地域住民を核とした環境を主題とするテーマコミュニティーを構築できるのか、方法論や技術論をないがしろにする訳ではないが、いかなる方法や技術を投入するのかと言った問題を検討するより、地域の生活文化を基礎にして活動の主体をどのように形成するのかと言った問題の方が難しい。
NPO植物資源の力は、今年から活動のフィールドの一つをその所在地である水俣市袋地区に求めた。袋地区は、閉鎖海域である不知火海の内海水俣湾のさらに奥に在る袋湾を中心にできている人口四千人の地域社会である。東は、矢筈岳山頂からはじまり、源流から河口までを地域の中に有している。その歴史は、定かではないが、江戸期辺りから干拓事業が繰り返され、住民は、田畑を築いてきた。貴重な原生林である冷水の森からは、滾々と水が湧き出しているが、水はまかない切れずに袋湾の奥手には、溜池が設置されている。また、湾周囲の埋め立てによってできた土地には、団地、住宅地、小中学校、合板工場が建ち並んでいる。その町並みを見ても、袋地域の生活の縮図がそのまま袋湾にあると言える。
袋の長老たちの生活文化は、自給自足を基礎にしていて環境にやさしい。自分たちが学ぶ事がとても多い。環境を保全し、低炭素社会を実現していくのに大切な技術や知識ばかりである。地域に入れば、先生は、長老たちである。この長老たちの持っている技を活かして楽しい活動を組み立てたい。子供、PTA,、各事業所、自治会、長老たちが「袋を愛でる」事を軸に袋湾のための楽しいネットワークを築くことが急務であると考えている。
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